• 検索結果がありません。

リオデジャネイロ・パラリンピック参加報告 IBS | IBS Annual Report 研究活動報告2017

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "リオデジャネイロ・パラリンピック参加報告 IBS | IBS Annual Report 研究活動報告2017"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

IBS Annual Report 研究活動報告 2017 85

Ⅴ.海外学会参加の概要

*企画戦略担当部長 博士(工学) **交通まちづくり研究室 室長 ***都市交通研究室 研究員 博士(工学) ****都市交通研究室 研究員

リオデジャネイロ・パラリンピック参加報告

A Report of Rio 2016 Paralympics

牧村和彦

 須永大介

**

 松本浩和

***

 廣瀬健

**** By Kazuhiko MAKIMURA, Daisuke SUNAGA, Hirokazu MATSUMOTO and Takeshi HIROSE

1

はじめに

2016 パ ラ リ ン ピ ッ ク 競 技 大 会( 正 式 名 称:Rio 2016 Paralympic Games)は、2016 年 9 月 7 日 〜 18 日までの 12 日間、ブラジルのリオデジャネイロ (以下、リオ)で開催された。前月(8 月 5 日〜 21 日)

に開催されたオリンピック競技大会に匹敵する大規 模なイベントであり、隅田川や江戸川区花火大会が 約 2 ヶ月間続く規模のイベントと考えると分かりやす い。ちなみにブラジルでは冬期にあたるものの、パラ リンピック期間中は連日猛暑であった。

写真-1 オリンピックパーク内の様子

主たる競技会場は 4 箇所に分散配置されており、オ リンピックを契機に郊外の都市問題を解決するため、 バッハ、デオドロ、コパカバーナ、マラカナンの 4 つ のクラスターが会場となっている(図- 1)。主要な競 技はバッハ地区に設営されたオリンピックパークに集 約され、選手村等もバッハ地区内に整備されている。 それぞれのクラスター間は、アクセスコントロール された高規格幹線道路と郊外鉄道、地下鉄及び BRT (Bus Rapid Transit: 高速バス輸送システム)で結ば れ、観客や関係者の移動を支えている(図- 2)。拠点 間の距離は約 20 km である。

筆者らは、パラリンピックへの参加の機会を得た。 本稿では、参加を通して感じた知見や教訓、我が国へ の示唆をとりまとめた。

図-1 リオの競技会場の配置1)

出典)日本パラリンピック委員会

図-2 会場と基幹公共交通ネットワーク

注)BRT Rio 公式サイトマップから作成

2

パラリンピック開催時の交通サービス

(2)

86 IBS Annual Report 研究活動報告 2017

Ⅴ.海外学会参加の概要

国際空港内には BRT が直接乗り入れており、空港 ターミナルの目の前には、BRT の停留所が整備され

(写真- 2)、国内線ターミナルの目の前にはライト

レールが乗り入れている(写真- 3)。利用者にとって これほど分りやすい乗り継ぎはないと思われる。施設 と交通機関はユニバーサルなデザインとなっており、 車椅子の方でも自走で施設や交通機関を利用できるよ う工夫されている(詳細は後述参考)。

会場を結ぶ主たる基幹公共交通は BRT が担ってお り、筆者の目視観測では表定速度は 40 〜 60 km/h、 1 時間 1 万人を超える輸送力を誇っていた。地下鉄と BRT の乗り継ぎ拠点は一体の構造となっており、地下 鉄のラッチを通過しエスカレータを昇ると BRT のホー ムとなっている(写真- 4)。

公共交通機関は IC カード(Rio カード)のみ利用可と なっており、また、競技期間中の特定区間の地下鉄利 用には競技の入場券が必要である。

写真-2 国際空港に乗り入れているBRT

停留所はスロープ構造となっており、連節バスに水平で乗降でき るよう工夫されている

写真-3 国内空港に乗り入れているライトレール

写真-4 地下鉄と一体となったBRT停留所

20 〜 30 秒の頻度で運行するため、停留所では待機の車両が長蛇 の列をなしていた

バリアフリーの対策は随所に見られ、国際空港ター ミナルや会場内、オリンピック選手村等でのマイクロ バスの乗降用に仮設のバス停が設置されており(写真- 5)、BRT の全ての停留所では、車椅子が自走で水平移 動できるようバス停留所の高さをバス床の高さに合わ せて整備がされていた(写真- 6)。

主要な乗り継ぎ拠点には対応可能な言語表記のある ゼッケンをまとったボランティアが配置され、また会 場までの移動手段が一目で分かる案内板が設置されて おり(写真- 7)、非常に行き届いたきめ細かな対応が なされていた。

(3)

IBS Annual Report 研究活動報告 2017 87

Ⅴ.海外学会参加の概要

写真-6 水平に乗降できるよう工夫された停留所

BRT の停留所は全て、バス停留所の高さをバス床に合わせて整 備されている

写真-7 主要な乗り換え拠点に配置された案内板

3

リオから学ぶ点

(1)人ありきのオペレーションセンター

オリンピック開催 1 年前に訪問したオペレーション センターは(写真- 8)、2010 年 10 月に設立され、 40 名を超える専門スタッフが常駐し、それぞれ利害が 異なる職員で構成されている。警察、消防、電気、気 象、危機管理、病院、道路管理者、バス管理者など、 その場で意思決定できる職員を集め、それぞれの管理 者から集められた情報はこのオペレーションセンター で一元管理されている。衛星、気象センサー、プロー ブ情報(Waze を利用)、バス運行情報、街中のカメラ 画像、警察官の位置情報、SNS 情報等様々な情報は同 一レイヤで重ね合わされ、瞬時に必要な情報を取り出 し、利害関係者で確認協議ができるよう工夫されてい

る。加えて、オリンピック開催の 4 年以上前から日々 365 日訓練してきている点は学ぶ所が多く、ワールド カップやカーニバル、オリンピック 1 年前のローマ法 王の招聘への対応など、大規模なイベントの準備を通 して、本番に臨んでいる点も見逃せない。

(2)競技場以外の交通需要の想定と対応

競技会場は、パラリンピック開催期間中、日中から 非常に多くの来場者で賑わっていた(写真- 9)。これ は競技観戦者だけではなく、各地で行われるイベント の来場者による影響と思われる。これら数十万人規模 の需要をオリンピックパークでは BRT が捌いており、 時間当り数万人の輸送能力が主要会場には求められる であろう。

写真-8 市のオペレーションセンター

写真-9 平日・日中に会場を後にする人々の群れ

(4)

88 IBS Annual Report 研究活動報告 2017

Ⅴ.海外学会参加の概要

一方で、東京オリンピックのメイン会場となる豊洲 やお台場地区には、数多くのイベント会場や集客施設 が点在している。湾岸エリアで計画中の基幹交通輸送 について、会場来場者や関係者以外の交通需要をどの 程度見込んで計画するかが大きな課題である。リオで は会場内の内々交通、会場間の交通需要が多くあり、 湾岸エリアの内々交通や、湾岸地区と山の手地区間の 交通需要への柔軟な対応に関しては、リオの経験から 学べる点は多い。

(3)オリンピックを契機とした旧市街地の大改造

リオではオリンピックを目的とせず、オリンピック を手段と捉え、4 つのクラスター開発と合わせて、旧 市街地の大改造を行っている点は注目すべきであろ う。オリンピックの 1 年前に訪問した際には、旧市街 地は自動車とバスで溢れかえっていたが、オリンピッ ク開催時には見事に生まれ変わっていた。官庁街が集 まる幹線道路は歩行者と自転車、ライトレールのみが 通行可能なトランジットモールとなり、歩道、自転車 道、ライトレールの走行空間が分離された構造となっ ている(写真- 10)。また、ウォータフロントと旧市街 地が結ばれ、国内空港とも直結した。

ちなみに、パラリンピック開催中はライトレールが 開業したばかりということもあり、モール区間の安全 に配慮し、警察のバイクが車両を先導していた。

写真-10 トランジットモールとして再生した旧市街地

自動車中心の 4 車線の街路が歩道、自転車道(中央)、ライトレー ルのみの空間に生まれ変わった

4

おわりに

東京オリンピック開催に向けて我が国では、最先端 の技術を駆使した様々な取組みが計画されている。一 方で、全体のモビリティをデザインし、日々変動する 交通需要をマネジメントしていくのはあくまで「人」で ある点を忘れてはならない。過去経験したことのない 大規模な移動需要を想定した真夏の一大イベントがオ リンピックであり、リオでは 4 年前からの周到な現場 主義による準備を重ね、徹底した安全安心な移動環境 を実現していた。事前のマスコミ報道などで流布され た危険な状況は、全く感じられなかった。

2020 年の真夏での開催を考えた場合、通常の緊急 搬送に加えて、イベント関連の搬送が加わることから も、緊急搬送とその走行空間の確保は重要な課題であ る。リオでは緊急搬送や病院の空き状況等も先に紹介 したオペレーションセンターで一元的に管理対応して いる。東京では一般街路の適切なオリンピックレーン の設置は言うまでもなく、中央走行での専用レーンの 確保とその安定した運用(交差点、信号制御)が求めら れよう。

パラリンピック期間には多くの車椅子の方や移動困 難な方々を見かけたものの、自走により地下鉄、郊外 鉄道、BRT が利用できるハードとソフト両方の環境が 整備されており、我が国よりも遙かに進んだユニバー サルデザインにより、停車時間が延伸したりするなど の様子は全くみられなかった。オリンピックを通して 移動制約者が安心して外出できる環境を我が国が構築 できるのか、大きな課題である。

パラリンピックに参加した経験から、リオではス ポーツという大規模なイベントを通して都市づくりや 人づくりがなされ、また、想像を遙かに超えて、それ らを支える安全安心なモビリティが確保されていた。 リオから日本が学ぶ点は多くあると感じる。

参考文献

1) 日本パラリンピック委員会:リオ 2016 パラリン ピック競技大会会場マップ、http://www.jsad. or.jp/paralympic/rio/info/venue.html

参照

関連したドキュメント

 「事業活動収支計算書」は、当該年度の活動に対応する事業活動収入および事業活動支出の内容を明らか

−参加者51名(NPO法人 32名、税理士 16名、その他 3名).

11月7日高梁支部役員会「事業報告・支部活動報告、多職種交流事業、広報誌につい

 本研究では,「IT 勉強会カレンダー」に登録さ れ,2008 年度から 2013 年度の 6 年間に開催され たイベント

平成30年5月11日 海洋都市横浜うみ協議会理事会 平成30年6月 1日 うみ博2018開催記者発表 平成30年6月21日 出展者説明会..

茨城 NPO 事務支援センターを設立し、NPO 会計スタッフ及び NPO 会計サポーターを人材育成す

①幅 20cm×高さ 17cm×奥行き 100cm ②幅 30cm×高さ 25cm×奥行き

【 2010 年度事業報告 並びに 2011 年度事業計画(継続)( 3 件)】..